10年程前から心配されていたデフレ問題が、大きく報道され始めました。
“羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く”とか、「インフレに対する用心が、過剰ではないだろうか。」との声は、日増しに多くなっています。
“デフレスパイラル”についても「心配だ。」から、「既に始まった。」との声に変わり始めてきました。
「住」を支える不動産業に携わる私たちは、以前から長期資産デフレを心配してきました。
次のような対応が考えられると思っています。
バブル崩壊の処理は、民間では終わりに近づいているとはいえ、国はまだ解決したとはいえません。そんな中で、実勢価格が路線価を下回った場合、(既に一部で始まっている)日本経済の進む方向が見えなくなるのではないかと心配です。
一方、私たちへの不動産購入希望アクセスでは、「すぐにでも買いたい。」と考えておられる方は、今も、何十万人もあるのではないかと感じとれます。
しかし、その方々の多くは、手持資金不足を理由に融資が受けられないため、残念ながら実現できていません。
増税なき税収増のためにも、不動産取引活性に期待したいものです。
今、都心の不動産市場は、買い手も売り手もお見合を繰返すことが多くなっています。
売り手は、「いくらなんでも安過ぎる。」
買い手は、「まだ下がるかも知れないから急がない。」「買うとしたら、余程安くなければ決断しない。」
借入予定のある人は、「金利上昇が気になる。」
銀行は、「担保資産に値下がりリスクがあるので慎重に対応する。」
事業者は、「資産評価損が続くため、少しばかりの事業益では決算書が悪くなるばかり。」
住宅を購入し、長期ローン支払い中の方は、「万一、売却しなければならなくなった時、売却金で残債が支払えるかどうか心配。」
長年コツコツ働いたお金で、わずかばかりの不動産をやっと手にしていた人達は、「老後の安心と子供達への親心と考えていたが、安心が遠くなっていく。」
いずれも“資産デフレに対する不安”です。
“日本の個人金融資産1,400兆円”の安心については、しばしば報道されます。しかし、その数倍とも数十倍ともいわれる個人・法人所有の不動産時価総額については、正確に報道されたことはありません。いろいろな評価方法があり、正確な評価は難しいからだと思いますが、資産デフレによる日本の“GDPロス”の実態が報道されないことは心配です。
土地神話がバブルとなり、その後始末の代償はあまりにも重く長く、依然多くの国民にとって将来不安の大きな要因となっていることは間違いないようです。
一方で、不動産の取引は堅調と見る人は少なくありません。
売却希望の方は、やはり、相続関連が主流ですが、この時期購入される方の多くは、以前のように土地の値上がり期待ではなく、将来にわたり継続使用(利用)が目的のようです。全国宅地建物取引業協会連合会の調査結果では、60代以上の方の60%以上が、「今、買い時だ。」と思っておられるとのことです。潜在的なものを含め、需要は増加傾向にあるのかも知れません。
環境重視の長期ビジョンに沿った、不動産取引の活性化は、税への貢献も大きい上、不動産価格安定に繋がっていくでしょうから期待したいものです。
「金は天下の回りもの。」
「宵越しの金は持たない。」
“江戸っ子”といわれる方々が口にされるのを、今も耳にします。
そんな方は、
「みんなで支え合って生活している。」
「先のことは心配しない。」とも言われます。
将来不安と無縁なのは、江戸文化の一つなのかも知れません。
江戸時代の、貨幣の流通量はさほど多くなかっただけに、お金が、相当効率よく回っていたのではないかと想像できます。又、千両箱の保管をモチーフにした話が多かったことからも、お金をあまり手許に置かなかったのではないでしょうか。
今、日本の預金は、所有コストがかからなく、リスクはほぼありません。
ペイオフが一時期社会問題になりましたが、日本には馴染まなかったようですし、デフレ下では、金利もさほど期待されなくなりました。
そのため、長い不況といわれている今も依然、日本の個人金融資産は1,400兆円以上と言われています。
モッタイナイと思っているだけでは済まなくなってきました。
不動産取引の活性化は、これまで度々市場経済と公共財源に大きく貢献してきました。大不況と言われる今こそ、“行儀のいい不動産取引”が活発にならなければいけない時ではないでしょうか。
私たちは明日の安心に繋がる不動産取引最前線で頑張り続けてまいります。