昭和56年5月以前の旧耐震基準で建てられた安全が懸念される建物等、既存建物の耐震化を進めるため、平成30年4月からホームインスペクション(建物状況調査・検査)関連法が施行され ます。
建物の耐用年数を長くするための取り組みでもあるようですから、“100年安心住宅の始まり”となれば良いと思います。
ホームインスペクションは、見た目だけでは判断が難しい建物の状態を、専門知識を持つ第三者機関が検査することで、より詳細に判断し、不動産取引のトラブルを少なくしたり、取得後のメンテナンスに役に立てることを目的としたものです。
施行により宅地建物取引業者は、既存住宅取引時の重要事項として、「建物状況調査の有無」の説明が義務付けられます。
不動産保証協会の資料による国土交通省のガイドラインの概要
■ 検査項目
構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高い劣化事象等の有無
雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高い劣化事象等の有無
設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じている劣化事象等の有無
■ 検査方法
目視、計測を中心とする検査。原則、破壊調査は実施しない
■ 検査人
建築士・建築施工管理技士で、実務経験や講習受講者の情報開示⇒消費者が選択可能に
他、既存住宅現況検査の手順や業務実施上の遵守事項、情報開示
一方で、賃貸契約中の老朽化建物の場合、所有者が建て替えを希望しても、入居者全員の合意に数年単位の時間がかかることは珍しくありません。
この様ケースでは、建物は虫食い入居となり、所有者は空室リスクと、危険な建物の管理者責任リスクを負うという問題点が残されます。
大規模改修、建て替え等は権利関係の規模が大きい程難しくなります。
先日、今年1月1日時点の全国地価公示が発表されました。
住宅地がリーマンショック(2008年9月15日)以来9年ぶりに、「全国平均でも下げ止まった」 との報道です。
土地取引の最前線にいる私たちの実感は、東京都心部に限定すると、4年前から毎年5%前後安定した上昇を続けていて、この間の上昇巾は
20~30%です。
27年前の約2分の1になったことで、バブルの再来を懸念される方が出始めているようですが、地域差拡大による郊外の過剰在庫は考えられても、東京都心部に関しては、2020年以降も急激な変化はないと考えます。(28年3月4日と28年10月5日付このコラムでもお伝えしました)
今も、一般向けの売地情報は殆ど無く、土地の取得が難しい状況が続いています。
地域によっては、今年は、買換・売却のチャンスかも知れませが、取得に当たっては、「再生コスト」と、「大量供給による在庫過剰リスク」のチェックは常に必要ではないでしょうか。
私たちは、東京の長期都市計画と、ホームインスペクション法に逆行しない原則のもとで、基礎工事、躯体工事等、見え無くなる所の工事中写真を出来るだけ多く残し、中古で売る時の調査に必要な多くの図面、書類を新築引き渡し時に保証書と一緒にお渡しています。
私たちは、古くなっても高い評価が得られるような“100年住宅”を目指しています。
前月のコラムで、都心木造準耐火アパートの意義についてお伝えしました。
今回は、都心に低賃料アパートが少なくなり、若年層の住まい確保が難しくなっていく情況をお
伝えします。
その昔、都心アパートの大家さんは、地元の不動産屋さんに入居者募集を委託しました。
委託された業者は、道路面のガラス窓等に貼紙広告をして借りたい方の来社を待ちました。
他には情報を流さず、決まるまで待つのが一般的でしたから長期空室もあったようです。
借りたい方は、希望する地域に出向き、付近の不動産屋さんを回りました。
一軒で紹介される数が少ないため、複数の駅を回られましたが、同じ物件を重複紹介されること
はあまり無かったようです。
現在は、委託された業者に情報公開が義務つけられています。
ネットが普及し、多くの業者に情報が流れるようになりましたから、借りたい方は、自分の都合 の良いところで情報が得られるようになりました。
同時に、地域毎の家賃相場と在庫情況がわかり易くなり、無駄な空室も少なくなりました。
私たちが提供している部屋も、2月末で 98%、3月半ばには満室になる予定です。
ターミナル駅の近くには、“お部屋探し看板”が目立っていますが、同じ物件が重複して広告され ているため、他社で申し込み済になっている物件も多くなっています。
広告には、価格的魅力のある物件が使われることから、協会は、おとり広告にならないよう指導 しています。
今、耐震・不燃基準を満たしている都心居住用物件の新築・中古の平均賃料は、m2単価 5,000 円 が目安で、16 m2で8万円、20
m2で 10 万円位です。
残念ながら、8万円以上のアパートを借りられる若い人はそんなに多くいません。
オーナーサイドから求められる利回りは、表面 5%、実質 4%が下限ですから、今後は、物件が少な くなる事はあっても増えることは無いと思います。
民泊は管理が難しく、シェアハウスは安全条例との問題点が指摘されている中、晩婚による定住
化、大災難時のセカンドハウスといった新しい需要も出ています。
昔のように、下宿をさせて下さる方は殆どおられなくなり、都心に住みたい、若年層の住まいの 事情は厳しくなる一方です。
「座って半畳、寝て一畳」は昔話ですが、スタディー・リラクゼーションスペースを加えても、 居室は7m2(東京都安全条例による共同住宅の最低居室床面積)で収まります。
それに、あさ風呂と独立トイレ、キッチンを加えても専有面積は 10 m2程度です。
今、都心に 10 m2住戸を耐震・不燃化で提供するための一室当たり概算コストは、
土地代 900 万円、建築代(付帯込)470 万円、取得経費 130 万円、計 1,500 万円くらいです。
坪単価ではやや割高になりますが、10 m2であれば6万円台で提供できます。但し、土地代は上昇中で、既に前記価格より 30%以上高くなっている地域もあります。
10 m2住宅は広いとは言えませんが、私たちは、耐震・不燃に、隣室との防音、外気との断熱と強 制換気等の安全を最優先しています。2階建という安心感も好評です。
監理の指導で、地域住民からの悪い評判も殆どなくなってきました。
社会に出て立派になられた方から、若い頃狭い部屋で学んでこられた話しは良く聞きます。
私たちは、これからの日本を支えて下さる若い人達に、“安全でプライドある木の城”と感じてい
ただける住まいを都心に提供してまいります。
住んで下さる方々が大きく育って下さり、「狭かったけど良い時間が過ごせた。」と想い出してい ただける日を楽しみにしています。
国民にとって、不動産は最大の財産です。
時が変わっても、国民から“安心出来る財産”と信頼されることが、国の最大の役割ですが、一番難しいことでもあります。
不動産は、取引時に深刻な争いが表面化することがあることから、不動産取引業に携わる人は、対応できる勉強をしておくことを義務つけられています。
中でも、相続問題と並んで、民法と建築基準法との兼ね合いは、権利の及ぶ範囲の判断が難しいこともあり、特に難しい問題とされています。
ここでは、狭小道路の問題とセットバックについて取りあげてみます。
東京の不動前業界で一般的に言われるセットバックとは、建築基準法42条2項の規定「宅地が、道路幅員4mに満たない狭い道路に接している場合、道路の中心から2m以内に建築物(塀等含)を造ってはならない。」という規定に該当する場合のことです。(例外地域有)
セットバック線は、区に狭あい道路申請をして決めてもらいます。
既に確定している場合は即決で、通常、数週間で確定出来ます。道路の種類によっては、対面所有者を含み多くの近隣の立会が必要なこともあり、半年程度かかることもあります。稀とはいえ、不成立の場合もあます。この場合は不動産評価を下げることとなります。
金融機関から融資を受けて新築する場合、事前の建築確認申請時に必ず狭あい申請をしなければなりません。
一般的には、土地の所有者は、建て替え又は売却時でなければ申請されません。
セットバック分の道路整備工事は、殆どの区が無償でしてくれるのですが、中には、先祖が江戸時代で、現在の建築基準法によるセットバックを考えようとしない方もおられます。
私たちの事業エリアには、時間のかかる大規模再開発が予定されている地域が多くあります。
このような地域にある比較的小さな土地は、バブル期には虫食いになりました。
そんな土地の繋ぎ活用の一つとして、私たちは原状復帰コストが低く、インカムも比較的有利な木造アパートを、災害に強い準耐火構造建物での活用を提案をしています。
大災害対策への貢献が最大の目的です。
平成27年4月4日付このコラムで、私たちの事業でセットバックし、道路として無償提供した面積は、1,041坪になったことをお伝えしましたが、現在は、1,200坪以上になっています。
実質的には購入された方の負担になっているわけですが、すべての方が道路への無償提供のことをプラスに考えて下さいます。
部屋が狭いとのご批判もありますが、設備の充実、地域との調和、スラム化しない管理等の工夫で、入居者、近隣の方から高い評価をいただいています。
このような土地は、誰かが活用しなければ、バブル期のような街になってしまいます。
私たちは、“東京の安全”を世界に発信し続けられるためのお手伝いをしてまいります。