日本は、国土の約2/3が森林で、世界でも有数の森林資源大国です。
それは、埋蔵量が決まっている地下資源と違って、次世代へと継続できる資源であり、防災・環境・水資源面からも、国策として守っていかなければなりません。
日本の風土で育った木材がどれ程のものかは“法隆寺や東大寺が実証”してくれています。
しかし、平成26年4月2日付当コラムでお伝えしましたが、日本の林業は今、崩壊しようとしています。加えて、有害鳥獣食害も深刻化しています。
そんな中、市の面積の約84%が森林である養父市(兵庫県北部但馬地方)が、今、立ち上がろうとされています。(私の故郷です)
養父市(27年2月の人口24,622人)は、昨年、「国家戦略特区に指定」されました。
現在は農業先行ですが、地域再生に向けて多くの方々が林業にも真剣に取り組んでおられます。
先日、市長さん始め関係者の方々にお会いしてきましたが、「中山間地域の地方再生モデル先導役としての期待に応えたい」との志がヒシヒシと伝わってきました。
今のままでは、「地域の将来すら話せない」ほど、限界にきていることも伺いました。
以下は、養父市林業の実態と、取り組まれている内容の一部です。
養父市の 森林面積は、市全体の84%で、35,595ha(内 人工林20,947ha)です。
森林資源量は、634万m3
森林の年間成長量は、15万m3(一戸建住宅にすると約5,000戸分相当)
全体の55%が、樹齢36~55年の人口林
2013年の年間搬出木材量(実績)は、10,705m3
兵庫県の森林(民有林)の4割は、スギ ・ヒノキが占めていて、人口林では、立木の蓄積量が、毎年約100万m3増え続けていますが、現在その内の2割ほどしか使われていません。
近年の増加は、合板やパルプ・チップなど付加価値の低い利用によるものです。
林業継続のためには、成熟し大径化しているスギ木材の平均価格引き上げが必要です。
そのためには住宅用材に活用し、付加価値を引き上げなければなりません。
しかし現実は、木造軸組工法で梁・桁などの横架材には、価格と強度の不安から国産材はわずか7%しか使われていません。
木造軸組工法の梁・桁においてスギ材は柔らかく接合強度が弱いとのイメージがあるからです。
特に、養父市は積雪が2mにも達する多雪地域が存在するため、横梁材にはマツ類が好まれます。
そこで、スギ材を多用出来る技術開発が求められるようになりました。
兵庫県では、仕口の強度を高めるため、仕口耐力の検証を進め、2年前に強度の信頼性の高い仕口開発に成功しました。
こうして生まれた“高強度梁仕口「但馬テイポス」”をご紹介します。
従来のプレカットでは、繊維直交方向の底面のみで耐力を受けるのに対し、
仕口形状をテーパーとすることにより、繊維方向に耐力を分散し、高強度を実現。
開発:兵庫県(特許出願済・商標登録)
[技術情報・許諾契約等に関するお問い合わせ]
兵庫県立農林水産技術総合センター森林林業技術センター TEL:0790-62-2118
養父市では、木造高層化時代に向け、中期目標ながら、CLTの実用化早期拡大にも積極的に取組まれています。
CLT=Cross Laminated Timber ・・・・・直交集成板
「斜面で育った木材の特性」再評価、「斜面を活かした搬出」コスト削減などの研究が進むことも期待したいと思います。
私たちは、養父市産木材が首都圏へ流通する道筋をつくるお手伝いをしながら、“森林の大切さ”をより多くの方々に知っていただく努力を続けてまいります。